2014/12/15

第1学期が終了

ご無沙汰してます。

今日でやっとすべての試験が終了しました。
ここ2、3週間はほとんどテスト勉強の毎日だったので、外食したり、ネットサーフィンをしたりする時間が全くありませんでした。
(国際関係を学んでいるのに、ニュースすら読む時間がないのは矛盾ですが。)
ここ数日間に至っては、スーパーでサンドイッチを買い貯めて、食べる間を惜しんで勉強してました。

もう本当に疲れた。
こんなに勉強したのは大学受験以来か、もしかしたら日々のプレッシャーはそれ以上だったかもしれない。
ウィーン外交アカデミーはボローニャ・プロセス(EU圏内での単位互換制度)を導入しているので、 追試は実質2回まで受けられますが、それでも奨学金をもらいながら、親のお金や自分の貯金をやりくりして勉強するのでは大学受験とはプレッシャーが全然違います。
周りの友人も、かなり気が滅入るくらい勉強していたみたいで、毎日朝方まで図書室は満席だったようです。
ストレスから扁桃腺が腫れて呼吸困難に陥り試験を受けられなかった友達もいるほどです。

日本の学校では自分が「いかに勉強していないか」を晒しながら実はそこそこ勉強していて、結果もそこそこいい、というパターンが多いですが、ここの大学院では(他はどうかわかりませんが)、まず相当勉強しなければ試験に合格できないのは明らかなので、そんな自慢をする人はいません。
むしろ、「勉強していない、わからない」というアピールをしていると、だんだん周りから信用されなくなり、勉強会などに呼ばれなくなります。
「ワークショップ」と呼ばれる、いわゆるグループ研究では生徒は自由にグループを選べますが、そういった時に信頼性が影響してくるのは確実で、それが直接成績に響くことだってあり得るわけです。

かといって、これはマジョリティな意見ではないかもしれませんが、「勉強している」アピールをする人がかなりいて、そういう人たちに苛立ちを覚える人がいるのも事実です(自分含め)。
いろいろな行事や学習内容に関する質問などほとんどすべてfacebook上でコミュニケーションが取られている、だいたいテストに近づくと「レッドブル2杯飲んで朝3時まで勉強した!」とか、「勉強しすぎて疲れた!」とか、その類のポストがかなり増えてきます。
こうなってくると、ストレスはそのポストを見ている人たちに感染していきます。
そういった、いわゆるピアプレッシャー(仲間からの圧力)が、ポジティブなものであればいいのですが、押し並べてストレスを含んだネガティブなものになりがちです。
少なくとも、自分はそういうポストばかりアップデートされていることに気分を害したので試験期間中はfacebookは見ていませんでした。

肝心の試験内容ですが、またこれが範囲が広いのなんの。
特にEU法に関しては条約の全文(厚さでいうと両面コピーで7、8cm)+αが試験範囲なわけです。
もちろんすべての条文を覚えられるわけはないですが、試験には条約を持ち込むことができるので、全文に目を通し、どこにどの内容が書いてあって、その意味と歴史(ケーススタディ)はどういったものか、といったことを体で覚えていくしかないんです。
国際法に関しても、国連憲章やウィーン条約、国際司法裁判所規定などはまず頭に入っている前提として、それらの解釈について問われます。

試験内容は、日本の試験みたいに穴埋めや一問一答でなく、例えば「加盟国に対するEUの法支配の構造を述べよ」といった、一見どうにでもなりそうな質問が出てくるんです。ある意味一問一答よりも難しいかもしれません。
これは今日あった試験の3つの問題のうち1つですが、これは何でも書きゃあいいってわけではなく、きちんと論理的に説明しなければいけません。

例えば、まずEUの権限はどの程度与えられているか、基本条約を引用します(従属性原則は、確か第5条に書かれていますが、EUに与えられた権限のうちでのみ管轄権を有する、ということを明確にする。でないと、何に対する支配?ということになってしまう。)。
そしてその権限を行使して、欧州委員会が加盟国に対してどうやって決定を遵守させるか(これも基本条約に書かれていますが、欧州委員会が加盟国をモニタリングするという事実を覚えていなければ試験時間内に条約から引用するのは難しいでしょう)を書き、
もしその決定に従わなかった場合委員会はどういった行動が取れるか、そしてそれに対して欧州司法裁判所の判決は何に基づいて決定しているか(条約の解釈如何)、
判決の優位性は欧州連合裁判所か、加盟国内裁判所か(これはEU裁判所であるということを、Costa v Enelのケーススタディを用いて説明する)。
そういったことを頭の中で整理しながら(というか整理している時間はないですが)2ページから3ページ程度書きなぐるわけです。

そりゃーもう、書いてる途中にあっちいったりこっちいったりするのはもうしょうがないので、「おれはちゃんと勉強して知っているぞ!」ということをアピールすれば、少なくとも点数は稼げる(のだと信じています)。

政治学に関する授業は、もっと幅広いです。
試験の24時間前に論文(だいたい30−40ページ)を受け取り、それを読みます。
自分の論文はトルコとアルゼンチンのポピュリズムを比較した論文でした。
簡単に言えばネオ・リベラリズム=資本主義がポピュリズムを招いたが、それは国内構造によってトルコは右派的に、アルゼンチンは左派的に変遷していった、というもの。

テストの問題は2つですが、1つ目はまさかの「批判しなさい」 の一文。
そして2問目は「同じ従属変数「多様なポピュリズム」のビッグデータ(Large-N)研究デザインのアウトラインを書きなさい」。

従属変数とは、例えば大きな問題「民主主義」があったとして、民主主義という従属変数は選挙権や思想の自由、財産の自由などといった様々な「独立変数」から成り立っているわけです。つまり「多様なポピュリズム」をどのようにして「独立変数」に分解して研究するか、ということ。

ビッグデータ(Large-N)研究デザインとは、スモールデータ(Small-n )の対義語です。
スモールデータとはたとえば2カ国の比較をして、それぞれの異質性と同質性を見出していくわけです。論文の内容でいうと、アルゼンチンは強い労働組合があって、トルコにはない。アルゼンチンは国外の経済的圧力で経済が破綻したのに対して、トルコでは国内経済が破綻していた。そういった違いを並べていって「ネオリベラリズムに対する不信感」という共通点を見出すことによって「ネオリベラリズムが、多様なポピュリズムを生み出した」と結論づけるわけです。これは一般的にMost Different System Design(最も異なるシステム・デザイン)と呼ばれています。

逆に2つの似たような国(しかし異なる従属変数)を選び、同じ独立変数を並べていって、異なる独立変数1つを取り出すことによって、「この独立変数違いが異なる従属変数を導いている」という結論付けを行うのがMost Similar System Designです。
例えば、戦前の中国と日本。中国と日本は歴史も似ている、言語も似ている、文化も宗教も似ている、ただ従属変数はそれぞれ異なる共産主義とファシズム。「もしかしたら、ブルジョワジーと地主の結びつきが日本をファシズムに変えて、ブルジョワジーと農村部の結びつきが中国を共産主義に変えたのかもしれない」と、「ブルジョワジーの存在」という独立変数に着目して理論を進めていくわけです。

それに対して、Large-N研究デザインは膨大なデータを利用して、演繹的に特定の結論を導き出すわけです。

という説明を聞いてもらってわかるように、Large-Nデザインについてよくわかっていないという、致命的な問題が発生したわけです。
もう、これに関しては、なんともいいようがないです。試験が終わったあと、3時間くらい打ちのめされていました。
書き上げたアウトラインはもう、支離滅裂で、Large-NとSmall-nがこんがらがって、結局何を研究したいのか、どうやって研究したいのか全く一貫性なし。

もしかしたら不合格かもしれませんが、これに関してはほんとにしょうがない。
教授は授業で何も教えてくれないし、何をどう勉強したらいいかわからなかったし、アウトラインの書き方なんて学んでないし。

というか、2ヶ月ちょいちょいの8回や9回程度の授業でこれだけの範囲を求められて、しかもたかだか1週間や2週間のうちに5つも試験を受けさせるなんて、かなり非道だと思う(まぁ、学んだことは多かったのは事実だけど)。
コスタリカでは1週間に試験は2つまでという法律があるくらい。
上にはEU法、国際法、政治学について書きましたが、他にもマクロ経済とフランス語の試験だってありました。
すべてに平等な時間配分をするのは、頭で必要性はわかっていても、無理です。

というわけで、そんなこんながあって試験はすべて無事(?) 終了しました。
試験終了後は友人とインド料理屋さんで早速ビールを飲んで、昼寝をして、今に至ります。
明日は部屋の大掃除をして、水曜日にはベルリンに出発する予定です。

また近々更新します。